紛争の内容
ご依頼者の方は解体現場での作業中に労働災害事故に遭われ、後遺障害等級12級の認定を受けられました。
事故により深刻な後遺症を負われたにもかかわらず、相手方(元請・下請業者ら)は過失割合を強く争い、会社側の責任を否定する姿勢を取っていました。相手方は、事故前に十分な安全教育を実施していたこと、および使用する器具の性質上やむを得ない事故であったことなどを主な根拠として、ご依頼者の方に対する賠償責任を限定しようとしておりました。
また、本件では元請から3次下請けに至るまで複数の業者が関係しており、当事者が多岐にわたるという複雑な構造を有しておりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
訴訟提起前の交渉段階において、相手方は一貫して過失割合について争う姿勢を崩しませんでした。
これに対し、解体現場における安全配慮義務や使用者責任に関する裁判例を詳細に調査・分析し、相手方の主張が法的に成り立たないことを具体的な判例を引用しながら書面にて提示いたしました。
安全教育の実施については、その内容・程度・実効性が問われるものであり、形式的な教育の実施のみをもって免責とはなり得ないこと、また器具の性質に起因する事故についても事業者側が当然に予見・回避すべき危険であることを論拠として示しました。複数の当事者が存在する中でそれぞれの責任の所在を明確にしながら交渉を進めた結果、訴訟提起に至ることなく示談による解決の運びとなりました。
本事例の結末
訴訟提起前の示談交渉において、ご依頼者の方の主張する過失割合の認定が相手方に受け入れられ、最終的に850万円の示談金を獲得することができました。今回の総損害額は2000万円であり、労災からの支給が1150万円ほどあったため、残りの850万円の支払いを会社から受けられました。
本事例に学ぶこと
労災事故においては、相手方が「安全教育を実施していた」「器具の性質上避けられない事故だった」などと主張して責任を回避しようとするケースが少なくありません。
しかし、形式的な教育の実施があったとしても、その内容や実効性が不十分であれば免責の根拠とはならず、また事業者が当然に予見し得るリスクについては、器具の性質を理由に責任を免れることはできません。こうした相手方の主張に対しては、関連する裁判例を丁寧に調査・引用しながら法的根拠を明確に示すことが、交渉を有利に進めるうえで極めて重要です。
また、本件のように元請から複数の下請業者が連なる複雑な当事者構造を持つ事案では、それぞれの当事者の役割と責任の所在を整理し、根気強く交渉を続けることが解決への道筋となります。早期の段階から弁護士にご相談いただくことで、証拠の確保や法的主張の組み立てをしっかりと行い、訴訟に至ることなく適切な賠償を実現できる可能性が高まります。労災被害に遭われた方は、ぜひお早めにご相談ください。
弁護士 時田 剛志
弁護士 遠藤 吏恭





140 レビュー