労災事例11

労災事例(11)
ごみ収集の会社に勤め、ゴミ収集車で移動してゴミを回収していた富田さん。
ある日、可燃ゴミの収集作業において、ゴミを収集車に入れようとした際に、ビニール製のゴミ袋が左手に絡みつき、ゴミ収集車の回転板に、ゴミ袋と一緒に左手が巻き込まれ、途中で止まったものの、左肩の下を切断してしまいました。
※労災を説明するための架空事例です。会社名や名前は仮名となります。

1 労災の流れ

手の切断ということで、ご本人はもちろん、ご家族の方もご心配、ご不安な思いをされたと思います。
今回の事例では、富田さんは、仕事中にごみ収集車の回転板に巻き込まれて手を切断してしまったので、労働災害の申請をすれば、様々な給付を受けることが出来ます。
では、どのような労災保険給付が受給できるのかというと、おおむね次の図のようになります。

労災の流れ

大別して、①治療を進める段階と、②症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階とに分かれます。

①治療を進める段階

治療を進める段階では、治療費が発生しますので、療養給付を受けることにより、その全額を給付してもらえます。
また、お仕事をすることもできない場合には、休業給付を受けることにより、所定の金額(※)を給付してもらえます。
(※)所定の金額とは、原則として、「給付基礎日額」(=災害が発生した日以前3ヵ月間に被災した労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った額)が、休業1日につき、給付基礎日額の60%、加えて、給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されます。
また、療養開始後1年6か月が経過しても治癒せず、後遺障害等級(第1級~第3級まで)に該当するときは、傷病年金として、給付基礎日額の313日~245日分の年金が支給されます。

②症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階

症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階では、障害給付の対象となります。
具体的には、後遺障害等級が第1級~第7級の場合には、給付基礎日額の313日~131日分の障害年金を給付してもらえます。
また、第8級~第14級の場合には、給付基礎日額の503日~56日分の障害一時金が1回、支給されます。前者の障害年金については、後遺障害が治るか亡くなられるまでの間、継続して、支給され続けます。
後遺障害等級は、第1級が最も重く、第14級が最も軽い後遺障害があります。
手を切断してしまった場合は、以下の通りの認定がされます。

2 手を切断してしまった場合の後遺障害等級

後遺障害等級 後遺障害の内容
1級6号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
4級4号 一上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級2号 一上肢を手関節以上で失ったもの

※「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは?
次のいずれかに該当する状態です。
A 肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断した
B 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断した
C ひじ関節において、上腕骨と橈骨および尺骨とを離断した

※「上肢を手関節以上で失ったもの」とは?
次のいずれかに該当する状態です。
A ひじ関節と手関節の間において上肢を切断した
B 手関節において、橈骨および尺骨と手根骨とを離断した

3 会社に対する損害賠償請求等の流れ

労災給付を受け取ったとして、それ以外の金銭は受け取れないのでしょうか。
実は、会社に対して、損害賠償請求を行使できる可能性があります。賠償請求のタイミングは、多くの場合、症状固定後になります。
労働災害は、労働者が会社のために労力を提供している中で起きることが大半です。
使用者である会社としては、労働者が安全に業務を遂行するよう様々な配慮をし、安全策を講じなければなりません。
そのような策を講じず、あるいは不十分であったために生じた労災については、会社も賠償責任を問われることになります。
そして、労災により給付される金額は、会社の損害賠償請求できる金額の一部に過ぎないことが大半ですので、労災給付とは別に、損害賠償を請求することが可能です。

例えば、今回の事例では左肩の下を切断されておりますので、上記表の【4級4号】にあたるとします。
その場合、労災からは、特別支給金264万円+給付基礎日額の213日分が障害特別年金として支給されます。
給付基礎日額とは、簡単に言うと、1日あたりの給料です。仮に1万円とすると、213万円が年金として支給されるということになります。

それでは、労災からこのような金額がでたとして請求できるは、これでおわりでしょうか。実は、労災からは、「慰謝料」はでないので、これは会社に請求することができます。
4級4号の場合の基準慰謝料は、1670万円です。

4 過失相殺

ところで、損害賠償請求では、過失相殺といって、労働者の落ち度を指摘されることもあります。過失が認められれば、損害額から過失割合分を減額(民法722条2項の類推適用)される可能性もあります。
今回の事例でも、仮に、富田さんの左手にビニール製ゴミ袋が絡みついた原因が、富田さんにあったという場合、その原因の程度に応じて、富田さんの過失割合が決められ、その分が損害から引かれる可能性はあり得ます。

5 おわりに

労災に遭われた方及びそのご家族の方は、治療等の労力にとどまらず、労災手続のこと、将来の仕事、経済面での不安、会社との交渉をどのように進めるべきか、どのような証拠をどうやって集めたらいいのかなど、心配事が尽きないのが通常です。
労災の事件処理は複雑な面がありますので、労災に関する手続や経済面での不安については、弁護士にご依頼いただくことも選択肢の一つです。
私たちグリーンリーフ法律事務所の弁護士は、少しでもご負担を軽減することや妥当な賠償を受けることに繋がるよう尽力いたします。
お悩みの方は、まずは弊所までお気軽にお問合せください。

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