紛争の内容
解体工事に従事していた原告が、資材置場での積込み作業中、被告従業員の操縦するユンボに左手指を挟まれ、左示指基節骨骨折等の負傷を負いました。原告がまだ合図を出していないにもかかわらず重機を稼働させたという、被告側の明らかな不注意が原因です。原告には左示指の疼痛として後遺障害14級9号が認定されましたが、被告側は損害額や責任の所在について争う姿勢を見せました。
原告は日本語が不自由な外国の方なので、多言語での対応となりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
訴訟では、被告の使用者責任(民法715条)を追及し、治療費、休業損害、逸失利益および慰謝料などを請求しました。特に、事故当時の作業手順(合図の有無)や、原告が「一人親方」という形態であっても実質的には被告の指揮命令下にあった点などを主張の柱としました。裁判所からは、事故態様の過失割合や将来の労働能力喪失の程度について、双方の主張を整理するよう促されました。
本事例の結末
最終的には、裁判所からの和解勧告を受け入れ、被告が原告に対し解決金として約350万円を支払う内容で和解が成立しました。判決まで争うことで生じる時間的コストや、労災保険からすでに一定の給付を受けている点(既払金控除)を考慮し、本人が早期の金銭的解決を優先した結果です。
本事例に学ぶこと
建設現場における重機作業では、一瞬の連携ミスが取り返しのつかない後遺障害を招くことを再認識させる事例です。今回のように作業手順が守られなかったケースでは、企業の使用者責任が厳しく問われることになります。また、提示額と実際の和解額に開きが出ることもありますが、立証の難易度や訴訟期間を天秤にかけ、依頼者にとっての「実利」を最優先に判断することが重要です。
弁護士 申 景秀





140 レビュー