紛争の内容
本件は、配送業に従事するご依頼者様(ご高齢の男性)が、業務中にトラックから荷下ろし作業を行っていた際、荷物の下敷きとなり負傷された事案です。
ご依頼者様は作業にあたり、所定の手順の一部を省略してしまっており、それが事故の一因となっていました。そのため「自分に落ち度がある事故でも労災が認められるのか」という不安をお持ちでしたが、労災保険は労働者保護の観点から、故意などの重大な例外を除き、不注意があった場合でも問題なく適用されます。
また、ご依頼者様はご高齢であり、お怪我の痛みも相まって、複雑な労災申請手続きをご自身だけで進めることは困難な状況でした。そこで、当事務所が申請手続きのフルサポートを行うこととなりました。
交渉・調停・訴訟などの経過
本件の労災申請において最大の壁となったのは、「年齢による身体への影響(加齢変性)」と「事故による怪我」の切り分けです。
ご高齢の方の場合、事故で身体を痛めても、労災認定の審査において「それは事故のせいではなく、元々の持病や加齢によるもの(=事故との因果関係が薄い)」と判断され、適切な後遺障害等級が認定されないリスクが高まります。
そこで弁護士は以下の対応を行いました。
医学的証拠の確保
主治医の協力を仰ぎ、現在の症状が「加齢によるものではなく、事故による外傷であること」を明確にする診断書の作成を依頼しました。医学的根拠に基づき、事故と症状の因果関係を強く主張する方針を固めました。
遠方からのリモートサポート
ご依頼者様は大宮の当事務所から遠方にお住まいでした。お怪我の状態を考慮し、無理な来所をお願いすることなく、LINEや電話、郵送等の手段を用いて密に連携を取りました。ご不安な点があれば即座に解消できる体制で、スムーズに手続きを進行させました。
本事例の結末
当初の見立てでは、症状の程度から「第14級(神経症状を残すもの)」の認定、あるいは非該当となる可能性も想定される事案でした。
しかし、医師と連携した適切な立証活動が功を奏し、審査の結果、当初の想定よりも上位の等級である「後遺障害第10級(関節の機能に著しい障害を残すもの等)」の認定を受けることができました。
その結果、最終的に合計で約330万円の労災給付金を獲得することができ、ご依頼者様の今後の生活を支える十分な補償を実現しました。
本事例に学ぶこと
労災の手続きは非常に専門性が高く、ご依頼者様のほとんどは手続きに不慣れな方です。特に本件のように「自分の不注意があった」「高齢である」といった事情がある場合、ご自身だけで申請を行うと、本来もらえるはずの等級よりも低い認定結果になってしまうケースが少なくありません。
弁護士のサポートがあれば、煩雑な手続きを任せられるだけでなく、医学的なポイントを押さえた申請が可能となり、適正な補償を受けられる可能性が高まります。
また、遠方にお住まいの方でも、LINEなどのツールを活用することで、距離を感じることなく安心してご依頼いただけます。お仕事中の事故でお怪我をされた場合は、諦める前に、労災に精通した弁護士へぜひ一度ご相談ください。
弁護士 時田 剛志
弁護士 小松原 柊





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