事案の内容
依頼者は、勤務先工場で仕事中、工場通路に置かれていた障害物に転倒し、長期の通院を必要とするケガを負い、後遺症まで残ってしまいました。勤務中の事故であり、労働災害として、後遺症申請も認められました。しかし、勤務先は、その責任を認めず、慰謝料等の請求に対して真摯に対応しませんでした。そこで、依頼者は弊所にご相談にいらっしゃいました。
事案の経過(交渉・調停・訴訟など)
はじめは、勤務先の加入していた保険会社との交渉での解決を図っていきました。しかし、保険会社は、被害者に損害が生じていいないと主張したり、被害者に大きな過失があると主張したりして、適正な保険金による損害賠償を拒みました。そこでやむなく訴訟提起に踏み切りました。
訴訟でもっとも重大な争点となったのが、過失相談の問題でした。会社側は、被害者である労働者が足下をよく確認していないことに重大な過失がある、そもそも、工場には常に障害物が置かれていた、という開き直りにも取れる主張をしてきました。そして、被害者である労働者の過失は6割であると主張しました。
そこで、私たちは、障害物が死角にあったこと、障害物は常時置かれておらず本件事故時に初めてその存在を知ったことを主張していきました。
本事例の結末
最終的に、裁判所は、工場内での類似事故での解決内容を踏まえ、被害者である労働者の過失を3割と認定しました。
本事例に学ぶこと
一労働者が、会社を相手取って、慰謝料等の請求をしていくことは困難です。特に、労働災害事故については、論点・争点が多岐にわたり、弁護士なしに会社の責任追及をすることは極めて困難です。
本件では、被害者側の過失という、被害者の落ち度があった・被害者のせいだ、という反論をされることで、依頼者には大きな精神的負担が生じました。依頼者に過失がなかったことを根拠付ける主張を細やかに行っていくことで、実に会社側の主張する過失割合を半分にまで抑えることができました。
弁護士 時田剛志
弁護士 平栗丈嗣
66 レビュー