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運送会社に勤め、トラックから荷物を搬出していた中川さん。
雨の降る中、二人でトラックの荷台からカーゴ台車の荷下ろしの作業をしていると、もう一人がカーゴ台車のストッパーをかけ忘れたため、カーゴ台車が動き始め、トラックのテールから地面に向かっている斜めゲートを滑り落ち、下にいた中川さんに直撃してしまいました。
その結果、腰部を骨折するなどのけがを負ってしまいました。
※労災を説明するための架空事例です。会社名や名前は仮名となります。
1 労災に当たるかについて
本件はトラックからの荷物搬出作業中に、雨という悪天候と同僚の過失が重なりカーゴ台車が滑り落ちてきて腰部骨折などの大けがを負ってしまったという事故です。
労災の認定に当たっては、まず「業務災害といえるか」という要件があります。
業務災害とは、労働者が労働契約に基づき事業者の支配下にある状態(業務遂行性)で、業務が原因となって(業務起因性)、当該傷病等が発生したといえる場合をいい、裁判例では「業務に内在する危険が現実化したものによると認められること」などと表すこともあります。
本件では、荷物搬出作業中であったことから、前者の「業務遂行性」の要件は容易に認めることが出来そうですが、「①雨という自然現象」と「②同僚のストッパーかけ忘れという過失」が重なって事故が起きており、このような悪条件が重なった場合でも、後者の「業務起因性」があるといえるかが問題となります。
この点、①の雨の中で作業をするということは決して特異なことではありませんし、作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したに過ぎません。
また、②についても、業務をする中で、他の従業員が人為的ミスを犯すこともありうることで、やはり業務に伴う危険が現実化したものといえます。
従って、本件の根本さんのケースも労災に該当し、中川さんは労災保険から療養補償給付等の労災給付を受けられるものと思料されます。
以下、本件で想定される労災給付について検討していきます。
2 本件で受給可能性のある労災給付
(1)療養補償給付
ア 支給内容
被災労働者の傷病等に対する治療費及び関連費用が基本的には全額支給されます。
支給対象は、診療費等の治療費・薬代・手術費用・自宅療養の際の看護費等・入院中の看護費等・入院または通院のための交通費 が挙げられます。
もっとも、これは傷病等の内容によって、一般的な治療効果があるとされる範囲で認められるものです。
イ 受給方法
治療などを受けた病院などが、労災指定医療機関に該当するか否かで、受給方法が異なります。
指定医療機関での治療等を受けた場合、当該医療機関に労災請求用紙を提出すると、当該医療機関が労災保険から直接治療費を受け取れるので、労災労働者は無料で治療を受けることが出来ます。
これに対して指定機関以外で治療等を受けた場合は、被災労働者が一度治療費等の全額を支払い、その領収書などを労災請求の際に添付して支払い請求を行います。
(2)休業補償給付
ア 支給内容
被災労働者の給付基礎日額の60%に、社会復帰促進等事業に基づく休業特別支給金としての20%が加わり、合計給付基礎日額の80%が支給されるというものです。
イ 支給要件
この給付は、治療などを受けている被災労働者が休業を要する状態である場合に休業開始から4日目以降受給することができます。現在労災による治療などを受けており、就労不能状態であって、それにより賃金を受けていない場合である必要があります。
なお、「軽作業であれば働ける」という場合は就労不能状態ではないとされています。
ウ 受給方法
休業給付は所定の請求用紙に必要事項を記載し、当該傷病の主治医にも療養のために休業が必要である旨証明印を押してもらって、労基署に提出します。
(3)障害補償給付
労災による傷病についての治療などをした被災労働者が症状固定後も行為障害が残存する場合には、その障害の程度に応じて障害補償年金、障害補償一時金、障害特別年金、障害特別一時金、障害特別支給金が支給されます。
ア 支給内容
残存した障害の程度により、障害の等級が1級から14級までに分類されています。1級から7級については障害補償年金・障害特別年金及び障害特別支給金が支給されます。8級から14級については障害補償一時金、障害特別一時金及び障害特別支給金が支給されます。
イ 障害補償年金前払一時金について
障害補償年金を受け取ることになった場合、希望により一度だけ年金の前払いを受けることが可能です。希望する場合には、障害補償給付の請求の際に、「前払一時金請求書」を労基署長に提出します。
傷病の治った日の翌日から2年以内で、かつ年金支給決定通知の翌日から1年以内であれば、障害補償年金を受けた後でも請求が可能ですが、その場合は既払い分の年金額は差し引いた額を最高限度額とします。
3 労災保険給付以外の請求について
(1)加害者への損害賠償請求
本件では、故意ではないにしても、同じく現場で作業をしていた同僚がストッパーかけ忘れという人為的ミスをし、結果として労働災害が発生しました。
労災とは別に、故意または過失により損害を発生させた者に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
労災保険による補償は、発生した損害の満額ではなく、休業補償も約8割までであって、精神的苦痛を被ったとして生じうる慰謝料はありません。
そこで、労災保険で補いきれない部分を不法行為者である加害者、本件ではストッパーかけ忘れをした同僚本人に請求するということが考えられます。
その場合、加害者の過失と被害者の損害との因果関係や損害額を明らかにせねばなりませんから、労災認定より難しい場合も多いでしょうし、加害者の責任を認めてもらえたとしても、加害者に賠償額を支払う資力があるかということも考慮せねばなりません。
(2)会社への損害賠償請求
同僚のミスにより労災が起こったのだとすれば、同僚を雇用する会社にも責任が発生する場合があります。
会社は労働者との間に存在する労働契約に基づいて、労働者に適切な労働環境を提供すべき義務を負っています。
そして、会社が職場環境の安全に配慮せず、危険な仕事を危険な態様で労働者に従事させていたということであれば、上記の義務に違反しているとして、契約違反に基づく損害賠償が認められるといえます。
また、場合によっては、上記(1)の同僚を雇用していた会社として、使用者責任があるとして不法行為が成立する可能性もあります。
会社に対し上記責任を追及するのであれば、労災認定とは異なる難しさがありますが、労災発生の状況によっては、検討をしていく必要があるでしょう。
4 おわりに
労災が疑われる事故が起きたと一口に言っても、その態様は様々であり、検討すべき課題が多数あります。どう対処すればよいのか分からないなど、労災に遭ってお困りの際には、是非一度、私たちグリーンリーフ法律事務所にご連絡ください。
当事務所では、労災に関する説明や今後の方針などについてのご相談・ご助言を行っております。また、ご依頼いただき、労災に関する手続を進めたり、加害者に対する損害賠償を請求したりすることもできます。
私たちは、皆様のお悩みを解決する一助となれるよう、尽力して参ります。
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