目次
倉庫会社に勤め、倉庫内でフォークリフトを運転していた近藤さん。
野菜の入った段ボールを積んだパレットを運搬していると、後ろから同じくフォークリフトを運転する従業員がバックで衝突してきました。
相手の従業員は、後退走行左後方には注意不足のようでした。
その結果、頚椎捻挫、腰椎捻挫などのけがを負ってしまいました。
結局、半年間の通院を余儀なくされました。
※労災を説明するための架空事例です。会社名や名前は仮名となります。
1 労災の流れ
今回の事例では、近藤さんは、会社で与えられた業務を行っている最中に、その倉庫内で同じ業務をしている従業員の運転するフォークリフトの追突によってけがを負っているため、業務遂行中に業務に起因して生じているといえ、労働災害に該当するでしょう。
労働災害が認定されれば、労災保険給付が受給できます。
では、どのような労災保険給付が受給できるのかというと、おおむね次の図のようになります。
大別して、①治療を進める段階と、②症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階とに分かれます。
①治療を進める段階
治療を進める段階では、治療費が発生しますので、療養給付を受けることにより、その全額を給付してもらえます。
また、お仕事をすることもできない場合には、休業給付を受けることにより、所定の金額(※)を給付してもらえます。
(※)所定の金額とは、原則として、「給付基礎日額」(=災害が発生した日以前3ヵ月間に被災した労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った額)が、休業1日につき、給付基礎日額の60%、加えて、給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されます。
また、療養開始後1年6か月が経過しても治ゆせず、後遺障害等級(第1級~第3級まで)に該当するときは、傷病年金として、給付基礎日額の313日~245日分の年金が支給されます。
②症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階
症状固定後に後遺障害が残ってしまった段階では、障害給付の対象となります。
具体的には、後遺障害等級が第1級~第7級の場合には、給付基礎日額の313日~131日分の障害年金を給付してもらえます。
また、第8級~第14級の場合には、給付基礎日額の503日~56日分の障害一時金が1回、支給されます。前者の障害年金については、後遺障害が治るか亡くなられるまでの間、継続して、支給され続けます。
後遺障害等級は、第1級が最も重く、第14級が最も軽い後遺障害があります。
近藤さんの場合、幸いにもケガにより入院等の必要性等がなく休業もしなくてよかったという場合には療養給付の受給が可能でしょう。
一方、ケガの程度が重く働くことができない場合(但し、軽作業であれば働ける場合は覗かれます)、療養給付に加えて、休業開始4日目以降から休業給付を受けることができるでしょう。
半年間の通院後、後遺障害が残ってしまったという場合には、障害給付も受給することが可能でしょう。
3 労災保険給付以外の請求について
(1)加害者への損害賠償請求
本件では、故意ではないにしても、同じく現場で作業をしていた外の従業員の前方不注意で労働災害が発生しました。
そのため、労災保険給付とは別に、ある者の故意または過失により損害を発生させた者に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
労災保険による補償は、発生した損害の満額ではなく、休業補償も約8割までであって、精神的苦痛を被ったとして生じうる慰謝料はありません。
そこで、労災保険給付で補いきれない部分を不法行為者である加害者、本件では前方不注意で事故を起こした従業員本人に請求することが考えられます。
このような場合、加害者である従業員の方の過失(前方不注意)と被害者である近藤さんの損害との因果関係や、いくら損害が発生したのか(慰謝料など)を近藤さんが証拠を集めて明らかにしなければなりません。そのため、労災認定より難しい場合もありますし、加害者である従業員が責任を認めたとしても、加害者に賠償額を支払う資力があるかということも考慮せねばなりません。
(2)会社への損害賠償請求
会社の従業員の不注意により労災が生じたのであれば、従業員を使用している会社にも責任が発生する場合があります。
会社は労働者との間に存在する労働契約に基づいて、労働者に適切な労働環境を提供すべき義務を負っています。そして、会社が安全に配慮せず、例えば、適切な教育をしない、左右後方が見にくいような仕組みになっていたということであれば、上記の義務に違反しているとして、契約違反に基づく損害賠償が認められる可能性もあるでしょう。
また、場合によっては、従業員を雇っていた会社=使用者の責任として、不法行為が成立する可能性もあります。
会社に対し上記責任を追及するのであれば、労災認定とは異なる難しさがありますが、労災発生の状況によっては、検討をしていく必要があるでしょう。
4 おわりに
労災でケガをした場合、どこにどのような責任を追及できるのかわからないことも多いと思います。
また、その態様は様々で、そもそも労災にあたるかという心配から、何が請求できるのかという検討すべき課題も様々です。
労災にあって、どのように対処すべきか良いかわからないなどお困りの際には、是非一度、私たちグリーンリーフ法律事務所にご連絡ください。
当事務所では、労災に関する説明や今後の方針などについてのご相談・ご助言を行っております。
また、ご依頼いただき、労災に関する手続を進めたり、場合によっては加害者に対する損害賠償を請求したりすることもできます。
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