概要

厚労省のホームページによると、「不安全行動」とは、労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為を指しているそうです。

損害賠償請求についての「因果関係」「過失」に関わる重要なものであるので紹介します。

手間や労力、時間やコストを省くことを優先し、つい「これくらいは大丈夫だろう」、「面倒くさい」、「皆がやっているから」、「(作業を早く進めるためには)仕方がない」などと考えたり、「長年経験しているから大丈夫」、「自分が事故を起こすはずはない」など慣れや過信から、「あるべき姿」を逸脱する安易な行動がとられた結果、労働災害に発展するケースが少なくないそうです。

労働災害発生の原因

労働災害が発生する原因は、労働者の不安全行動の他、機械や物の不安全状態(事故が発生しうる状態、また、事故の発生原因を作り出されている状態)があると考えられています。
厚生労働省では、不安全行動の類型として以下の12項目を、不安全状態として以下の8項目を挙げています。

【労働者の不安全行動】
[1]防護・安全装置を無効にする
[2]安全措置の不履行
[3]不安全な状態を放置
[4]危険な状態を作る
[5]機械・装置等の指定外の使用
[6]運転中の機械・装置等の掃除、注油、修理、点検等
[7]保護具、服装の欠陥
[8]危険場所への接近
[9]その他の不安全な行為
[10]運転の失敗(乗物)
[11]誤った動作
[12]その他

【機械や物の不安全状態】
[1]物自体の欠陥
[2]防護措置・安全装置の欠陥
[3]物の置き方、作業場所の欠陥
[4]保護具・服装等の欠陥
[5]作業環境の欠陥
[6]部外的・自然的不安全な状態
[7]作業方法の欠陥
[8]その他

これは、どちらかの原因によって100%事故が起きたとは言い難い事がほとんどだと思われますが、「労働者の不安全行動」に該当する行動があれば、労働者の「過失」があるということで、損害賠償額から「過失相殺」をされてしまう可能性があります。

逆に、「機械や物の不安全状態」があって、会社がそれを放置した結果事故が起きたという場合は、会社の責任につながる事情となります。

このような事項を参考に、責任の程度を決めることになります。

厚生労働省による「労働災害原因要素の分析(平成22年)」によれば、労働災害発生の原因は、① 不安全な行動及び不安全な状態に起因する労働災害:94.7%、② 不安全な行動のみに起因する労働災害:1.7%、③ 不安全な状態のみに起因する労働災害:2.9%、④ 不安全な行動もなく、不安全な状態でもなかった労働災害:0.6%、となっています。①と②を加えると、実に労働災害発生原因全体のうち96.4%が、労働者の不安全な行動に起因する労働災害とのことです。

最後に

不安全行動によって発生する労働災害を、労働者の心構え、意識だけで防止することはできません。その不安全行動が管理・監督の不徹底や、設備・環境面の欠陥によってもたらされることも少なくないからです。

不安全行動は、作業行動の「あるべき姿」からの逸脱ですが、この「あるべき姿」たる作業標準(作業手順)が明確に定められていなかったり、定められていても、十分な安全教育が行われていなかったりしたため、労働者が不安全行動をしてしまい、労働災害が発生した事例もあります。